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    2017年05月19日 更新

    転職を成功させるために知っておきたい「就業規則」について

     就労条件などのルールが記載された就業規則。転職にあたっては、この就業規則をしっかりと把握しておかないとトラブルを起こしてしまいかねない。そこで本記事では、転職活動をトラブルなく進めるために「就業規則」について解説する。


    目次

    • 就業規則とは
    • 就業規則がなぜ必要なのか
    • 就業規則に規定すべき内容
    • 就業規則の例
    • 就業規則の変更と意見書
    • 就業規則の周知義務
    • 従業員が就業規則を知らないと起こるトラブル
    • 転職する前に必ず確認すべきこと

    就業規則とは

     就業規則は、労働者と使用者の間で定めたルールブックのことで、主に基本的な労働条件や、会社の服務規程などが記載されている。就業規則は会社と労働者全員の包括契約ともいわれ、労使間で共通の規範を持つことで労働者が業務に集中し、生産性が向上するというメリットがある。また、「平等な労働条件を保つためのルール」としての役割りも果たしているといえるだろう。

    就業規則には「作成と届出」「意見書提出」の義務がある

     就業規則は、雇用形態を問わず10人以上の労働者がいる場合は作成し、行政官庁に届け出ることが労働基準法で定められている。

    常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

    出典:労働基準法第89条(作成及び届出の義務)より

     これに違反した場合は30万円以下の罰金が科される。届け出は所轄の労働基準監督署に行うが、その際に労働組合による「意見書」を添付しなければならない。これらは「労働基準法第90条」で義務付けられており、労働組合がない場合には、労働者の過半数の代表者が意見書を提出する決まりになっている。

    就業規則はなぜ必要なのか

    社会の情勢に合わせるため

     昨今では従業員による労働基準監督署への訴えなどにより、賃金や労働時間に関する問題が表面化することが多くなった。これらの問題は、経営者と従業員の権利関係があいまいであるが故に起きてしまう。こうした背景に加えて「ブラック企業」に対する社会の目も厳しくなっていることから、労使間の権利関係を明確にすることで、従業員が安心して働ける環境作りが求められるようになった。

    トラブルを回避するため

     残業代の未払いや退職にともなう不手際など、経営者と従業員の間で起こるトラブルを未然に防ぐためにも就業規則が必要になる。トラブルをめぐる細かい状況まで想定された就業規則を定めることで、解決のための無駄な時間や労力をなくすことができるのだ。

    経営者も労働者も満足するため

     就業規則は、会社をよりよいものにするために経営者の考え方を反映させる必要がある。経営者の考え方を設計図として、従業員と共に建設していくのだ。就業規則を明確に定めることで、従業員の働く意欲をアップさせることができ、それが会社の業績にもつながる。会社をさらに大きくさせるためには、その規模を見越した整備の他、法律の改正や新設にも柔軟に対応する必要があるといえるだろう。

     もちろん、考え方を反映させるからといって、経営者の独断で作っていいというわけではない。会社の実態に合わせつつ、従業員が安心でき、働く意欲を上昇させられるような工夫も必要だ。最も理想的な就業規則は、明確で先見性があり、かつ経営者も従業員も満足できるようなものである。

    就業規則に規定すべき内容

      就業規則には、法律上記載しなければならない事項があり、必ず記載する必要のある絶対的記載事項と、必要に応じて記載しなければばらない相対的記載事項に分かれる。また、法律で定められた記載事項以外にも、任意記載事項として実際に明確にしなければならない事項は数多くある。

    絶対的記載事項

    ① 勤務時間と休憩・休日に関すること
     始業・終業時刻や休憩の時間・休日・休暇の定めはもちろん、シフト制勤務の場合、それらに関する取り決めを記載する。

    ② 給料の支払いについて
     賃金の決定・計算方法とその締め日・支払日・昇給に関する取り決めをここで記載する。ボーナスなどの臨時の賃金はここでは記載しなくてもいい。

    ③ 退職に関すること
     退職時の扱い・解雇をする場合の事由、つまり理由や根拠を定める。これらを明確に従業員に周知することでトラブルを未然に防がなければならない。

    相対的記載事項

    ① 退職の手当てに関すること 
     退職金の計算方法や適用の範囲・支払いの方法や時期に関することをここで定める。退職の扱いとは違い絶対に記載しなければならないというわけではない。

    ② 臨時の賃金・最低賃金に関すること
     ボーナスなどの臨時の賃金、最低賃金に関する事項はここで記載される。

    ③ 食費・作業用品の負担に関する事項
     労働者の食費や作業用品の負担に関する取り決めを行う場合に定める。

    ④ 安全・衛生に関すること
     会社の安全や衛生面に関するルールを規定する。

    ⑤ 職業訓練に関すること
     新人の研修を中心とした職業訓練の内容やその訓練事項を定める。

    ⑥ 災害補償・業務外の傷病扶助に関すること
     労災など、勤務中の災害に対する補償・勤務外の傷病(入院など)に対する補償の内容などを定める。

    ⑦ 表彰・制裁に関すること
     表彰の制度がある場合はその種類(長期勤続など)と、減給などの制裁を行う基準をここで定める。

    ⑧ その他、全労働者に適用される事項

    おもな任意記載事項

    ① 服務規程
     上記以外に、労働者が遵守すべき職場内でのルールを定める。

    ② 副業に関すること
     一般のサラリーマンの副業は法律では禁じられておらず、会社ごとの裁量に委ねられる。社員の副業を禁止する場合は、任意記載事項として定めることができる。

    ③ 就業規則の制定の趣旨
     就業規則の制定の趣旨を会社が独自に定める場合、任意記載事項として記載される。

    ④機密漏洩に関する規定
     会社の機密事項の取り扱いや、漏洩した場合の措置に関する規定を定める。

    ⑤ 企業の理念など
     就業規則の根本精神などを表すために企業理念を記載することがある。これも任意記載事項の一つである。

    ⑥ 適用に関する規定
     就業規則が適用される労働者の範囲を規定することができる。

    ⑦パワーハラスメントに関する規定
     「セクハラ」「パワハラ」といったパワーハラスメントに対してどのような処置をとるかを規定することができる。とくに近年では社会問題化していることから、これらの規定の必要性が高まっている。

    就業規則の例

     厚生労働省東京労働局の公式サイトでは、就業規則の作成例が公開されている。ここで引用されているのはあくまで作成例であるため、各企業によって内容が異なるということを念頭に置いていただきたい。

    勤務時間・休憩・休日に関する規定の例

    (労働時間及び休憩時間)
    第17条 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。
    2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他 やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、 前日までに労働者に通知する。

    出典:http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0140/9547/04.pdf

    退職に関する規定の例

    (退職) 第48条 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 ① 退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して14日を経過した とき ② 期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき ③ 第9条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき ④ 死亡したとき
    2 労働者が退職し、又は解雇された場合、その請求に基づき、使用期間、業務の種類、 地位、賃金又は退職の事由を記載した証明書を遅滞なく交付する。

    出典:http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0140/9553/201471092944.pdf

    解雇の事由に関する規定の例

    (解雇)第49条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。 ① 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし 得ないとき。
    ② 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転 換できない等就業に適さないとき。
    ③ 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病 が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。
    ④ 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
    ⑤ 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格 であると認められたとき。
    ⑥ 第59条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
    ⑦ 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業 の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
    ⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

    2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。

    3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第60条に定める懲戒解雇する場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。
    ① 日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
    ② 2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
    ③ 試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者 を除く。)

    4 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求のあった場合は、解雇の 理由を記載した証明書を交付する。

    出典:http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0140/9553/201471092944.pdf

    退職金の支払いに関する規定例

    【第52条 退職金の支払方法及び支払時期】
    1 退職金の支払方法、支払時期については、各企業が実情に応じて定めることになります。労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

    2 労働者の同意がある場合には、本人が指定する銀行その他の金融機関の口座へ振込により支払うことができます。また、銀行その他の金融機関が支払保証した小切手、郵便為替等により支払うこともできます。

    3 退職金制度を設けたときは、退職金の支払に充てるべき額について金融機関と保証契約を締結する等の方法により保全措置を講ずるよう努めなければなりません(賃金の支払の確保等に関する法律(昭和51年法律第34号)第5条)。ただし、中小企業退職金共済制度や特定退職金共済制度に加入している場合はその必要はありません。

    出典:http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0140/9555/08.pdf

    就業規則の変更と意見書

     就業規則を変更する際、その作業は5つのステップに分けられる。

    就業規則を変更するための5つのステップ

    • ①就業規則に加える変更について、検討・決定する
    • ②代表取締役社長や取締役会など、就業規則の変更の権限を持つ人の決裁を受ける
    • ③決裁を受けた変更内容について労働者の過半数が加入する労働組合に意見を聞く。つまり従業員代表に意見を聞かなければならない。労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する人が意見を聞く
    • ④変更内容についての意見を「意見書」としてまとめてもらう
    • ⑤意見書、変更後就業規則、就業規則変更届を所轄労働基準監督署長に提出する
     ③以降では、従業員から変更に関する意見を聞いた上で、それをまとめた「意見書」の作成義務について定めている。作成時だけではなく、変更をする際にも従業員による意見書がなくてはならないのだ。意見書を求めるのは、従業員の権利を保護するだけでなく、労使間のトラブルを未然に防ぐ意義がある。

    就業規則の周知義務

    周知を徹底しないと就業規則は効力を発揮しない

     労働基準法の第106条には、就業規則は労働者に周知させる義務があるということが定められている。つまり、広く知らせるための努力をしなければならないということだ。

     社内の秩序は、それぞれが規則を守り、安心して働ける環境が整うことで作られる。こうした環境を整備するためには、会社側が就業規則の周知徹底しなければならない。周知徹底をした上で社員が規則違反をした場合に、初めて罰則が適用できるのだ。逆に会社側が周知義務を怠った場合、社員が規則違反をしたとしても罰則の効力が裁判で取り消されてしまう場合もある。

    具体的な周知方法も定められている

     具体的な周知の方法は、労働基準法施行規則第52条において次の3つのように定められている。

    ①常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
    ②書面を労働者に交付すること。

    ③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

    出典:労働基準法施行規則第52条2項
     
     これらの具体的な例としては、「入社時に書面で配布したり、掲示板に掲示する・書面をPCでいつでも見られるようにする」といった方法がある。

    従業員が就業規則を知らないと起こるトラブル

     転職をする際にもっとも起こりやすいのが「退職時のトラブル」である。ここで説明するトラブルの例は、就業規則を把握しておくことで避けることができる。そのため転職前は、現在勤めている会社の就業規則を確認することを強くおすすめする。

    退職日を会社側の都合で決められてしまう

     自己都合による退職は、「希望する日の1ヶ月前に申し出る」と定める会社が多い。円満退職をするためにも、会社が定めた退職ルールを把握した上で、遵守を心がけるのが望ましいだろう。また、有給休暇の日程を確認し、その消化と両立できるようなタイミングで退職日を設定するのも円満退職のマナーである。会社が定めたルールを把握せずに退職準備を進めてしまうと、後にトラブルを引き起こしてしまうおそれがあるため注意が必要だ。

    会社が退職を認めてくれない

     手順を守って退職手続きを進めていても、会社側から「退職は認めない」といわれ退職が困難になるような状況も想定される。こうしたトラブルを解決するには、規則で定められた権利を把握し、主張することが重要である。万が一そのような状況に陥った場合、労働基準監督署などの行政機関に相談をすることで解決に結びつくケースもあるため、自分だけで解決できない場合は行政機関を頼るといいだろう。

    退職金制度が支払われなかったり、不当に減額される

     退職をする場合、退職金制度に関する事項もチェックしておかなければならない。会社の恣意的な判断により不当な処遇を受けてしまうことがあるからだ。退職金は支給が義務付けられているものではないため、就業規則に退職金の規定があるのかどうかを調べる必要がある。企業によっては別途「退職金規定」を定めている場合もあるため、確認を怠らないよう心がけよう。

     退職金に関する規定がある場合は、自身の退職金を試算した上で人事部の担当者に確認してみるといいだろう。退職金に関する規定がない場合でも、過去に支給されている慣例があれば、これに基づいて請求することができるケースもある。この場合、支給されている慣例が確立したものであるかどうかを明らかにしなければならないため、注意が必要だ。

    転職する前に必ず確認すべきこと

    同業他社への転職に注意

     企業によっては、「退職後の競業避止義務」について規定を定めている場合がある。同業の会社に転職を希望する際は、あらかじめ上記のような規定がないか、ある場合はどのように規定されているかを確認する必要がある。転職先がライバル会社だった場合に、情報漏洩で訴えられてしまう可能性があるからだ。

     上記のようなトラブルによる裁判の判例では、「情報漏洩などのトラブルを避けるためには、会社側が競業行為を制限するための避止義務を、就業規則や誓約書で明確化する必要がある」としている。

     この際、会社側は「制限期間」「制限する職業の範囲」「制限に対する代償(制限の代償として退職金の増額を行うなどの措置)」に合理性があるかどうかを検討しなければならない。

     ただし、競業が禁止されていたとしても、日本国憲法の第22条1項で保障されている「職業選択の自由」が優先されるため、退職金の減額といったような不当な措置はできないようになっている。

    最後に

     就業規則には、あらゆるトラブルを避け、労働者の権利を明確にするためのさまざまな規定が定められている。転職に限らず、労働者は就業規則について積極的に把握しておく必要があるだろう。就業規則を把握することは、一労働者としての権利を主張するのはもちろん、転職者にとって「トラブルのないスムーズな転職活動」を行なうための一助になるはずだ。