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全天球カメラ「RICOH THETA」で映像体験の未来をつくる——株式会社リコー 高田将人 アイキャッチ画像
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2017年01月13日 更新

全天球カメラ「RICOH THETA」で映像体験の未来をつくる——株式会社リコー 高田将人

世界初! シャッターボタンを押すだけの1ショット簡単操作で、360度の風景を丸ごと撮影。ユニークな全天球画像や動画が楽しめる「RICOH THETA」シリーズ。写真好き、カメラ好きのみならず、SNSでひと味違った写真をシェアしたい人、デジタルガジェットファンからの支持も集めている「RICOH THETA」の画期的なものづくりビジョンは、どこから生まれたのか。「RICOH THETA」のプランニングを手がけるVR事業室の高田将人氏に、「RICOH THETA」に込めた想いを聞いた。

文:阿部美香 写真:海老澤芳辰

高田将人|MASATO TAKADA
1998年株式会社リコー入社。メカトロニクス技術者としてコピー/プリンター用のレンズ生産技術、超精密計測技術およびユーザインタフェース技術に関する研究開発に従事し、2010年からは全天球カメラTHETAのプロジェクトに参画。THETAのカメラ、アプリおよびWebの企画を担当している。

既存の体制に依存せず、新しいアイディアを次々と形にしていく


――「RICOH THETA」は世界で初めて、一般ユーザーが全天球画像・映像を撮影できるようになったユニークなデジタルカメラですね。そもそものアイディアはどこから生まれたのですか?

 「RICOH THETA」は2009年末から2010年にかけて検討をスタートしました。今後のカメラ事業をどのように伸ばしていくべきか、ということを目標に、「既存のデジタルカメラの延長」と「全く新しいデジタルカメラ」という2つのカテゴリーでワーキンググループ活動を実施しました。前者はデジタルカメラ事業に関わりがあるメンバー、後者は関わりのないメンバーを中心に集められました。その後者から生まれたのが、「RICOH THETA」の原型アイディアとなっています。

――カメラの開発者ではない方からのアイディアだったんですね。

 「RICOH THETA」のアイディアは、カメラ開発とは縁のない若手や女性社員からの発案でした。ミーティングの席で、「そもそも今の時代は写真やカメラそのものへのユーザー意識が昔とはまるで違っている」という話があったんです。

 とくにスマートフォンが普及してからは撮る写真そのものも変わっていきました。昔は記念日などの思い出として写真を残したものですが、今はランチの料理や街で見かけた面白いもの、仲間同士で遊んでいるときのさりげない日常を、サッと撮ってSNSで共有するのが当たり前になっています。自分が感動した雰囲気をみんなに伝える方法が、写真や動画なんです。

 その場の雰囲気をそのまま伝えるなら、今までのカメラのように風景の一部を切り取るのではなく、360度すべてを収められたらもっといいですよね?

――それで360度を映せる全天球カメラに!

 そうです。それに加えて、SNSへのシェアもアプリと連動して簡単にできたらなおいい。さらに、胸ポケットに入れられて、そのまま取り出せてもたつかず、縦横に構え直す必要がなく、すぐに撮影ができる。そんな製品を目指して、2010年の9月頃から社外から採用したスタッフ、私のような社内公募によるスタッフで構成された新規チームを発足したんです。そこから具体的に開発を進めていき、2013年の10月には海外で、11月からは国内で発売開始となりました。

試行錯誤によって製品をブラッシュアップしていく

撮影したデータはスマートフォンやタブレット端末ですぐに確認することができる

――商品を作り上げる上でとくに意識した点などはありますか?

 そもそも360度撮影を可能にするためにはレンズをいくつ使うのか、どうやったら消費電力を少なくできるのか、いかに簡単に画像処理ができて画質も良くできるか、どれだけお手頃な価格で提供できるか……といった、さまざまな要素を検討しながら試行錯誤を繰り返しました。最終的に大切にしたのは、「持ち歩きやすい小ささと軽さ」です。画像確認のための液晶ディスプレイも、普通のカメラなら画角の確認も必要ですが、そもそも全方位が映るので……。

――フレーミングを気にすることもない(笑)。

 そうなんです。SNS共有を念頭に置いていたので、スマートフォンとの連携は設計の段階で考えていました。そのため、撮影画像確認をスマートフォンで行うということを考慮しつつ、「誰もが直感的にわかる操作性」を意識しながらコンシューマー向けのわかりやすさを追求し、必要な要素を洗い出していったんです。そうした要素の検討や試行錯誤を経て、「RICOH THETA」の基本ができあがりました。

――既存のデジタルカメラとは全く違う
「RICOH THETA」
に対して、社内の反応はいかがでしたか?

 なにせ全く新しい製品なので、「どんなものができあがるのか正直想像できない」といった感じはありましたね(笑)。ただ、サンプルが仕上がっていくにつれて興味を持つ方は非常に多くなっていきました。とくに女性社員のみなさんから、「これはどう使うの?」といった声も聞かれるようになっていましたね。

Milky Way from an Norikura Observatory in Mt. Marishiten-dake, Japan - Spherical Image - RICOH THETA


ユーザーを巻き込むことでリリース後も製品が成長していく


――
「RICOH THETA」は
発売開始後、ネットユーザーを中心に大変話題を呼びましたが、開発のみなさんが驚くような使い方をされている方も多そうですね?

 「RICOH THETA」は通常のデジタルカメラに比べてかなり機能を割り切って作った製品です。なので、「こういうこともできるようにしたい!」と、ユーザー自身が積極的に自作のリモコンやアプリなどを開発したのには驚きました。

――かつてゲーム機のXboxの体感型コントロールデバイスKinectユーザーが、オープンソースのドライバを開発し、いろいろな応用がされたのにも似ていますね。エンジニア魂をくすぐるツールだったと。

 まさにそうなんです。ユーザーにそういったニーズがあることがわかったので、2015年から「RICOH THETA デベロッパーズコンテスト」を開催して、連動するアプリケーションやガジェットを募集するようにしました。すると、たくさんのユニークな応募が届いたんです。

――具体的にはどのような応募作がありましたか?

 例えば、船舶エンジンを検査するツールですね。船のエンジン検査は人が中に入って目視でチェックしているそうなんですが、「『RICOH THETA』の周囲にLEDライトを多数取り付け、内部をリモート撮影することで代替を行う」といった案が届きました。これは、「きらりNINJA」(日本郵船、MTI共同開発)というシステムなのですが、既に実用化もされています。

 他にも、スマートフォンの加速度センサーを利用して、自分がジャンプすると自動的にシャッターが切れて空を飛んでいるような写真が撮れる「THETA ActionPlus+」というアプリを開発された方もいます。また、「RICOH THETA」は手持ちで撮影すると必ず撮影者本人が映ってしまうんですが、撮影者の位置を変えて複数回撮影することで、アプリが写真を自動合成して本人の姿を消したり、逆に何人もの自分が映り込んだ写真ができる「CliPETA」というアプリなどもありました。

 「RICOH THETA デベロッパーズコンテスト」を通して斬新なアイディアがたくさん生まれ、実際に配布もされています。

――ただ全天球画像や映像を撮影するだけでなく、遊びなどにも使えるんですね。

 ユーザーそれぞれにニーズやアイディアがあることがわかったので、「RICOH THETA m15」発売のタイミングでスマートフォンから本体をハンドリングできるAPIやSDKを公開しました。みなさんにアプリをどんどん作っていただこうという試みをさまざまな形で行っています。

――どんな写真や動画を撮るか、ユーザーも工夫のしがいがありますね。高田さんは「RICOH THETA」をどう使われているのですか?

 毎晩、夕食時に必ず家族が揃った写真を撮っています。「RICOH THETA」発売から3年ほど、会社の飲み会のない日は休まず続けていて、10年後、20年後に1本の動画にまとめて楽しもうと思っているんです。もちろん飲み会の日も、集まったメンバーを撮っていますよ。社内の飲み会は、いたるところで「RICOH THETA」のシャッター音が響いて、かなり賑やかになります(笑)。

ユーザーに愛されるための細かいこだわりがある


――「RICOH THETA」はルックスも使い方も通常のデジタルカメラとは一線を画しますが、あの「ピュイッ」と聴こえる独特のシャッター音も、デジタルカメラらしくなくて可愛いですね。

 シャッター音は社内の音楽好きのエンジニアが作ったものなんです。普通の「カシャッ」という音ではつまらないので、「360度全部を吸い込むようなイメージで」とオーダーをしたらあの音になりました。

 動画撮影時は撮影開始と撮影終わりで2種類の音が鳴るんですが、そちらは「ドアが開くイメージ」と「ドアが閉まるイメージ」で作ってもらっています。うちの子どももシャッター音が大好きで、自然と笑顔になるんですよ(笑)。

――「RICOH THETA」は、そんなカメラらしくないところも人気の秘密なのでしょうか。

 レンズを向けられても撮られている感じがしないので、人物をナチュラルに捉えることができます。また、周りが全部映り込むので、後から写真や動画を観たときに新しい発見があるのも魅力の一つです。住む街、家、学校や職場など、思い出の場所を「RICOH THETA」で撮影しておくと、変化のすべてを記録しておくことができます。

――音楽アーティストがライブで「RICOH THETA」を使っていたりもしますし、友だち同士が集う場所で「RICOH THETA」を持っていると、人気者にもなれますよね。合コンにもオススメですね(笑)。

 全天球の面白画像をキッカケにLINEのID交換ができるかも知れないですし、SNSで共有すれば友だちにもなれるかも知れないですね(笑)。全天球画像・映像は今流行のVRヘッドセットで観るのも楽しくておすすめですよ。

さまざまな手法を用いて「新しい映像体験」の提供に邁進する


――エンターテイメントだけでなく、実用的な分野で幅広く活用されているのも「RICOH THETA」の魅力かと思います。
 宇宙開発、海洋生物の研究にも利用していただいていますし、身近なところでは不動産業者の物件紹介にも使われています。他にも、「さらに小型化して内視鏡のように使えないか?」という問い合わせをいただいたことがあります。いつか実現されて欲しいと個人的に思っているのは、遺跡や古墳の発掘現場での活用ですね。「RICOH THETA S」からは長秒露光機能で暗所撮影性能が飛躍的に向上したので、例えば貴重な壺の中を調べるなど、美術分野でもぜひ使っていただけたらいいなと思っています。

 「RICOH THETA S」以降はアメリカでの売れ行きも大変好調で、ヨーロッパのユーザーも増えています。日本も、初めの頃はガジェット好きの男性ユーザーが多かったですが、最近はInstagramで「#theta360」や「#thetaのある生活」などのハッシュタグ検索をすると、若い女性にもユーザー層が広がっているのを実感しますね。

――今後は、「RICOH THETA」でどのような展開をお考えですか?

 2013年の発売以来、これまでにない斬新な映像表現を手軽に実現できるツールとして、海外、国内で幅広い層に人気を博し、ロングセラーを続けてきました。現在は、撮影性能をよりアップしたハイスペックモデル「RICOH THETA S」や、よりカラフルでカジュアルなスタンダードモデル「RICOH THETA SC」も発売しています。

 今後の展開としては、よりキレイで、より臨場感を表現できる後継機の開発を進めています。新機能についても、ぜひチャレンジしていきたいですね。私たちの部署は、カメラというハードだけでなく、ソフトウェアやクラウドサービスなど、トータルで「新しい映像体験」をご提供するのがミッションであり、その入口となるのが「RICOH THETA」であると位置づけています。これからも、「RICOH THETA」だけでなく、クリエイティブに楽しんでいただける新たな映像製品、サービスを開発していきたいですね。


 リコーでは、今回紹介した「RICOH THETA」以外にも、24時間連続稼動が可能な全天球ライブストリーミングカメラ「RICOH R Development Kit」の開発が進んでおり、2017年春の出荷開始を予定している。
※3D CG画像のため、実際の商品とは細部が異なる可能性がございます

 360°の全天球ライブストリーミングはエンターテイメント以外にもさまざまな分野での活用が期待される。アイディアを形にし、次々と「新しい映像体験」を創造していくリコーから、今後も目が離せない。

「RICOH R Development Kit」の詳細はこちら⇒ RICOH R Development Kit 公式サイト

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