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    2017年05月22日 更新

    転職時に考えるべき「ワークライフバランス」の定義と企業の取り組みについて解説

     「ワークライフバランス」は仕事をする上で、自身のキャリアステップを向上させることはもちろん、結婚や育児・介護など、変化するプライベートを考慮することで、仕事以外のことも充実させるための概念である。ここでは、今後のキャリアを考える上で重要な指針になる「ワークライフバランス」について、その定義と企業の主な取り組み、具体例や課題などを紹介していく。

    目次

    • ワークライフバランスとは
    • 「ワークライフバランス」の実現をとりまくさまざまな背景
    • ワークライフバランスのおもな取り組み例
    • 企業のワークライフバランスに対する具体的な取り組み例
    • ワークライフバランスの充実に向けてはさまざまな課題も

    「ワークライフバランス」とは

     ワークライフバランスとは、「誰もが仕事に対してやりがいを感じ責任を果たしながら、個人や家族といった仕事以外の生活もより豊かなものにできるような社会」の実現を目指すことである。日本の労働環境や労働に対する価値観は、1980年代から90年代にかけて大きな変化を迎えた。そうした潮流に合わせ、ワークライフバランス実現の社会的ニーズは急速に高まっていったのである。

    「ワークライフバランス」の実現を取り巻くさまざまな背景

    社会的なニーズ

     企業間競争や産業構造の変化によってビジネスパーソンの働き方は多様化し、派遣や契約社員など、正社員以外の働き方が増加した。より激しくなる企業間競争によって、企業はコスト削減のために正社員を減らし、非正規雇用を増やす方向性にシフトしたのだ。こうした背景から、正社員と比べ不安定な雇用形態が増加し、経済的に自立しにくい層が現れるようになった。

     その結果、経済的な理由から共働きをする家庭が増え、子育てや家庭に時間を割くことが難しくなっていった。こうした社会的な問題を受け、安定した働き方と家庭生活を両立することができる環境の確立が求められるようになっていった。

    就業環境の変化

     日本では主に70年代から現在にかけて製造業からサービス・通信業へと産業比率の変遷が進行した。この変化は後の「IT化」につながり、パソコンやインターネットの普及に影響を及ぼした。こうした産業構造や就業環境の変化にともない、働く場所や時間も多様化させることが可能になったのだ。

     リモートワークの推進を中心に就業環境の多様化をうまく活用することで、生産性が向上できるだけでなく、時間の有効活用や、私生活の充実も期待できる。

    長時間労働問題の解決策

      80年代までの日本は、現在のように効率重視ではなく、「長い時間働いて、量で企業に貢献する」という考えが主流だった。ゆえに、長時間労働が蔓延し、個人の時間や家族団らんの時間が少なくなっていったといえる。長い時間の労働による疲労やストレスも増加し、健康的被害やトラブルも多く見られるようになった。

     しかし先述の通り、IT化にともない業務の効率化が進み、仕事の価値は量から質にシフトされるようになった。こうした価値観の推移によって短時間勤務やフレックスタイムなど、仕事量にとらわれない働き方が採用されるようになっていった。加えて、近年では過労死などが深刻な社会問題になっていったため、ワークライフバランスの早急な実現が急がれるようになった。

    女性の社会進出や景気の変化

     1985年の「男女雇用機会均等法」の制定、またバブル崩壊以降も景気悪化にともない共働きや女性の労働者が増加した。しかし、育休や産休の制度は未整備のままであったり、世代間の価値観の違いから育休や産休に対して風当たりが強いという現状だった。

      1980年代にアメリカで始まったといわれるワークライフバランスという概念は、もともと子育てをする女性の社会進出を促進するためのものだった。90年代に入ると日本にも浸透し、子どものいない女性や男性にとっても重要な考え方であるととらえられるようになった。

     現在、ワークライフバランスの推進は国レベルで進められており、内閣府は2007年に「ワークライフバランス憲章」を策定して毎年レポートを発表している。国だけでなく、都道府県や市町村単位でも独自のサイトを設けたり、表彰制度を取り入れるなど力を入れている。こうした風潮の中で、ワークライフバランスはどの企業も取り組むべき課題の一つとなっている。

    企業のワークライフバランスに対する具体的な取り組み例

      ワークライフバランスへの企業の取り組み方は、企業それぞれの持つ問題点や事情によってさまざまだ。大きくまとめると次のようになる。

    質を重視した業務価値の浸透

     先述の通り、80年代までは「どれだけ長い時間を仕事に割けるか」が重視されていたが、現在では、「限られた時間の中で仕事の質を上げる」という考え方へと変化した。昨今の電通による一連の事件を発端に、長時間労働に対する規制はさらに強まっている。

    残業の禁止

     残業そのものを禁止するというのがもっとも効果的な取り組みだといえるだろう。定時退社をルール化したり、残業をしたい場合は事前申請制にするなど、企業によってさまざまな取り組みがある。また、中には定時でオフィスを消灯したりパソコンをシャットダウンするといった例も見られる。

    長時間労働の削減

     求められる労働のあり方が「長時間」から「効率」へ重視されるようになったことで、労働時間も見直されることになった。始業・終業時間を自由に決められる「フレックスタイム制度」や、「短時間勤務」などが挙げられる。

    産休育休・有給休暇を取得しやすい環境づくり

     長時間労働が重視されてきた日本では、「休みがとりづらい」というのがそもそもの現状であった。エクスペディア・ジャパンが発表した「世界28カ国の有給休暇消化率ランキング」によれば、日本は50%で最下位。依然として低い状況だ。近年はその世界的水準の低さや長時間労働の規制が強化していることも相まって、休暇取得に対する取り組みが多様化している。
     
     共働きが増加する中で、男性も育児休暇を取得できる環境づくりが進められている。退職た場合であっても育児が落ち着いた頃に復帰できる再雇用制度や、休職中でもSNSなどのインフラを通じて職場の状況を共有できることなどが挙げられる。

    有給休暇の取得促進

     有給休暇の取得率を上げるために、管理職に就く者が率先して取得することで有給休暇を取りやすいものにしたり、「有給は消化しなければならない」という厳格なルールを設けるという例がある。取らなかった場合、その理由を報告しなければならないといった例も存在する。


    その他の休暇取得


     一般的な有給休暇だけでなく、誕生日やさまざまな記念日、家族でのイベントのために休暇を取得できる制度がある。配偶者の出産に立ち会うための休暇など、ユニークな制度を設けている企業も数多くある。

    育児・介護支援への取り組み

     法定では子供が1歳になるまでの間に育児休暇を取得することができるが、それだけでなく子育て全体を支援する動きも広まっている。また、育児ではなく両親の介護のための支援もある。休暇取得だけでなく、サービスの補助や手当などの経済的に支援する動きも見受けられる。

     育児・介護支援の取り組みとして挙げられるのは、事業所内に保育所そのものを開設したり、託児・ホームヘルパーなどのサービス補助のほか、保育料や介護料の経済的支援などだ。

    企業のワークライフバランスに対する具体的な取り組み例

      ワークライフバランスそのものの取り組みについて、具体例をいくつか紹介していこう。ここでは、2016年に行われた「ワークライフバランスフェスタ東京2016」に出展された企業を中心に取り上げる。

    夏休みに「子連れ出勤プログラム」でチームワークも向上

     株式会社シュフリーでは全スタッフが女性ということもあり、ワークライフバランスを意識した画期的な取り組みが行われている。子どもの年齢や通勤時間に応じてテレワーク(在宅業務)を積極的に活用するほか、1日15分間、仕事以外に家庭の悩みなどを共有しあう「カフェタイム」を設けているという。

     また、夏休み期間にスタッフが「子連れ出勤」を実施している。子育てをしながら仕事ができるという点はもちろん、家族に自分の仕事を理解してもらえたり、スタッフ同士がお互いの家族と触れ合うことで社内のチームワークが向上するといったメリットがある。

    「家族と過ごす時間を大切に」企業の考え方がもたらす高い休暇取得率

     静岡県に6店舗を展開する「お仏壇 やまき」では、有給休暇の取得率90%を義務付けている。そのため、業務内容の見直しをすることで誰が休んでも支障の出ない店舗運営を目指した。

     また、同社が設けている「ファミリー休暇」は、家族行事が目的の有給休暇で利用時に3万円が支給される。この制度を利用した休暇の取得率は100%であり、効果の大きだがうかがえる。休暇への「補助」は取得の促進に大きく寄与するのだろう。

     上記は、企業の考え方そのものが「ワークライフバランスへの意識」に繋がる実例である。仏具を販売するという企業柄、社員一人ひとりが「お客様の家族への気持ち」に寄り添わなければならず、そのためには社員自らも家族との時間を通じて暖かい家族の在り方を知るというのが同社の考え方である。

    休暇に対して「表彰」するという新たな取り組み

     株式会社 プレスクが行なっている画期的な取り組みが「休暇を表彰する制度」だ。「E-Vacation制度」とよばれ、有給休暇の過ごし方を社員内で共有する。過ごし方によって賞を設け、記念品などを贈与しているのだ。休暇にも競争原理を持ち込むことでモチベーションの向上、積極的な休暇の取得につながっているといえる。

      また、さまざまな記念日の休暇に対してグルメカードを付与したり、1時間単位での有給休暇の取得を可能にするなど、積極的なワークライフバランスへの取り組みが見られる。

    積極的な少子化に柔軟に対応。子ども向け携帯電話も補助

     ソフトバンクグループでは、子育てのしやすい職場環境づくりの一環として「出産祝い金制度」を設けている。入社1年以上ならば、第1子の出産で5万円。それから第2子、第3子と支給額が増え、第5子以降は500万円が支給される。

     また、子どもが小学校に就学すると、子ども向けの携帯電話が希望者に無料で配布され、親の在籍期間は基本料金が無料になる。

     子育てをすることは、「次世代の社会を担う子どもの育成」という意味で、企業としての基本的な役割であると同社はとらえる。そのため育児休暇だけにとどまらず、ベビーシッターなどの福利厚生が受けられるサービス、勤務時間の調整、休業中の業務用携帯電話やiPadの貸与など、子育てに対して積極的な取り組みを見せている。

    ワークライフバランスの充実に向けてはさまざまな課題も

     推進がうながされている「ワークライフバランス」だが、企業は多くの課題も抱えている。とりわけ、世代間の価値観の違いから生じる認識の差異や、生産性の問題などが挙げられる。それぞれの企業が抱える問題点を解決するだけでなく、社会全体で理解を深め、積極的な取り組みを行なう潮流を作ることも重要だといえるだろう。

    「マタハラ」への対処

     ワークライフバランスが女性の社会進出をうながしたことで、育児休暇に積極的に取り組む企業は多くはなっているものの、妊娠・出産をきっかけに女性が不当な扱いを受ける「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」は後を絶たない。

     世代間や男女間の価値観を双方理解することはもちろん、女性を積極的に管理職起用することなどが対処のカギとなりそうだ。

    生産性の向上

     ワークライフバランスを推進させるためには、生産性に対する配慮が欠かせない。休暇などに対するさまざまな働きかけを推進しすぎてしまうと、労働生産性そのものが低下しかねないためだ。

     代替となる労働力の確保はもちろん、在宅勤務や短時間出勤など「新たな働き方」を取り入れることや、「誰が休んでも対応できるような環境づくり」が生産性向上のために必要不可欠である。

    最後に

     本記事で取り上げたワークライフバランスの事例はほんの一部にすぎない。日本経済団体連合会(経団連)のWebサイトでは、各企業ごとにワークライフバランスへの具体的な取り組み状況を詳細に見ることができるため、ぜひチェックしていただきたい。

     ワークライフバランスを推進する取り組みが形骸化しないために重要なことは、ただ策定するだけでなく、企業・社会全体が現代の価値観の多様化に機敏に反応し、仕事と生活のどちらも充実させるという意識を持つことが重要だ。転職にあたって企業研究を行う際は、この「ワークライフバランス」がきちんと実現されているかも踏まえた情報収集をすることが望ましいだろう。